生死に関わる仕事に就いたことを天に感謝

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2010-02-18

生死に関わる仕事に就いたことを天に感謝

一日に10万回、平均80年間働き続ける心臓、わずか300g程度の臓器が「人の命」を司る。
心臓疾患治療の最前線で、生死のはざまで苦しむ患者と向かい合いながらメスを握り続ける心臓外科医とは如何なる存在なのか。
手術症例2000例を超えるスーパー心臓外科医 菊池利夫氏(医療法人社団榊原厚生会サピアタワークリニック院長)に、心臓外科の現在・過去・未来を語っていただいた。

―心臓外科医になると決めた理由はなんですか?

自分の治療の実力が、患者さんの病気の回復に直接的に反映される外科に興味があったんです。
内科専攻では、自分の治療で治ったのか、薬が効いたのか、よくわからないところがあります。
そこで、大学卒業後、心臓外科で有名な東京女子医科大学日本心臓血圧研究所循環器外科に入局することを決めました。

―研修時代のお話を聞かせてください。

心臓手術は特に術前・術後の管理が非常に大切です。
外科医になりたての頃は、管理ばかりをやっていました。手術の後は、朝まで患者さんの傍にいて術後の管理をするわけです。手術前に紫色をしていた患者さんの唇が、翌朝になると段々血色がよくなり、赤みを帯びてくるんです。劇的な改善を確認する、新聞配達の音が聞こえてきて、朝になったことを知る、そんな毎日でした。

―初期研修後は、手術の腕を磨きに武者修行に出られたとか?

その後、昭和53年に大阪の国立循環器病センター心臓外科へ移りました。
周囲の医師が皆、勉強家で、新しいものに取り組む姿勢に感銘を受けました。女子医大では、ベッドサイドで患者さんの様態を観るのが当たり前でしたが、国立循環器病センターではデータを基に考える治療を覚えました。例えば、アドレナリンという薬の使い方一つでも、女子医大の方法とは違うのです。今思えば、女子医大である程度の基礎を作って、他人の釜の飯を食いながら、多くを学んだことが非常に良かったと思っています。

―外科手術の話を教えてください。

昭和56年に財団法人日本心臓血圧研究振興会付属榊原記念病院心臓外科に移り、そこで25年間、心臓外科医として執刀し続けました。小児の心臓外科に携わり、副院長になるまでの25年間に約2000例は治療しました。心臓を庇護する技術や、診断技術が進歩しましたが、それを真近かでみてきたことになります。

―心臓手術はもちろん高い技術があって成功するものでしょうが、その他に大切な要素とは何でしょうか?

特に大切なことは手術スタッフのチームワークですね。
手術というとどうしても心臓外科医がクローズアップされますが、その周りのスタッフもそれぞれがプロとして仕事をこなしていかなければなりません。
看護師、技師と前もって作戦を立てておいて、難しい手術を展開するわけです。スタッフ各々が持っている能力や才能を上手に引き出してあげる。
そうすることで、一足す一が二でなく、三にも四にもなるのです。

―生死をさまよう患者さんと向き合う姿勢について特に注意しておられることは何でしょうか?

助かる運命にある患者さんを、術前、術中、術後、すべてのプロセスの中で親身に看ることが絶対に必要です。
人間として、親身になって診療にあたる。たとえば、患者さんが熱を出して苦しんでいるときに、ただ解熱剤を出すだけではダメなんです。
患者さんの話を聴いて、まず安心させる。そこが医師としての基本姿勢と考えています。

―生死を目の当たりにする心臓外科医としてお感じになられていることはありますか?

生死に関わる仕事に就いたこと、それを全うしていることに対して「天」に感謝しています。医者が病気を全部治せるわけではありません。
難しいことですが、苦しんでいる患者さんに如何に手を差し伸べることができるか。この仕事に就いたことに対して「感謝」という言葉でしか表わせませんね。

―今後、心臓外科医療の発展についてどうお考えですか?

患者さんの今の苦しみを取り除くことはもちろんですが、10年、20年後を考えた手術をしなければいけない。
患者さんの将来を見据えて、心臓外科医がどう関わっていくか。
科学技術の発展で、新しい治療ができる日も来るでしょう。例えば、心臓手術に必要な人工弁です。大変な場合は、一年ごとに交換をしなければなりません。これが、再生医療の発展で新しい人工弁が作られたら、そのような苦しみから患者さんは解放されます。
一日も早く、技術革新が行われることを期待しています。

柔和な表情、落ち着いた物腰の中でも時折みせる鋭い眼光は、紛れもなく外科医の眼差しである。
生と死を見続けてきた辣腕外科医が、インタビューの最後には優しいお医者さんの目になった。

文責:工藤

菊池利夫氏 近況撮影①

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菊池利夫氏 近況撮影②

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患者さんと同じ目線で・・・サピアタワークリニック

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サピアタワークリニック 外観

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